フランスの抗議運動は、8週目に入った。
マクロン大統領の側近、バンジャマン・グリヴォー報道官の発言がかえって火に油を注ぐことになり、昨夜、黄色いベストを着た抗議者たちが政府施設の入り口をブルドーザーで打壊した。
言うまでもなく、黄色いベスト運動の背景には仏国民の怒りがある。 (マクロン大統領が富裕層を優遇するのは、最初からわかっていたはず。彼はロスチャイルド系列会社の出身ですよね)
燃料税引き上げの反対をきっかけに、労働法の改悪、税制改革、中低所得者へのしわ寄せ、年金生活者の負担、生活費の高騰、格差の拡大など、さまざまな不公平が目に余る。さらに追い打ちをかけるような気候変動・環境の異常さ。人々が現システムのほころびに気づき始め、大統領へのつもりつもった不満や怒りが噴きだしたという感がある。
実は5年ほど前から、今のような成行きとデモの激化について指摘してきた人がいる。その一人が、ジョン=マーク・ ジョコビッチ (Jean-Marc Jancoviciエネルギー・気象問題の専門家) である。
彼のように、来たる危機と「大恐慌」について警鐘を鳴らす人たちがいる。フランスやEU政策に関わる科学者や知識人であり、彼らの発言はメディアにも取り上げられているらしい (うちにはテレビがないから、昨年まで知らなかった)。
- Definition of "Collapsologie" on Wikipedia (in French)
- Overview of Haut Conseil pour le Climat or France's "High Council for Climate" on Youtube (in French)
- 米軍やNASA関連の、非公開・非公式の (マル秘)ファイルや緊急警告などもあるようだ。
- see "Human and Nature Dynamics (HANDY) - Modeling Inequality and Sustainability" (in English)
- see "Human and Nature Dynamics (HANDY) - Modeling Inequality and Sustainability" reference at ScienceDirect (in English)
パブロ・サーヴィンニュ(Pablo Servigne 生態・農学の専門家)によると、2006〜7年をピークに原油生産は減産に転じている。代替できる資源はない。これまでのように石油資源が消費できなくなれば、産業経済の根幹がくずれる。原発の電源は喪失する。電気なしに、水や食料の確保も、移動手段の確保も困難になる。となると、プラスティック製のものが不可欠の医療は、崩壊する。燃料がなければ、運輸はマヒする。それに連鎖して生活物資の崩壊、通貨の崩壊、そして環境の崩壊。さらなる天変地異。
そういったシナリオを、今までのように専門分野に限定せず、気象学・農学・食料・燃料・エネルギー・経済・動物・植物学・医学・社会学・歴史学・災害史など、さまざま分野の専門家たちが、データを持ちよりファクト・チェックすると、「やはり危機はまぬがれない」という結論にたどり着くという。危機の要因が複合し、生命種としての人類が衰退していく。そのような連鎖的な災害や異変は、世界や日本のあちこちで既に起きている現象だ。
ここに到って、終末論、人類滅亡説が現実味を帯びてきた。人類の有限性を思い悩み、自殺したアメリカの専門家(崩壊説の父 Michael C. Ruppert)もいるらしい。明日、紙幣が単なる紙切れになるなら。今までの価値観は一変し「ゆたかな社会」の定義も変わるだろう。今、ちやほやされている人たちの威信も落ちるかもしれない。代わりに人々は肥沃な土地と自然のゆたかさを再発見し、農作物をつくる教育が大事になってゆくだろう。気候とエネルギー源が変われば、すべてが変わる。つまり、ナオミ・クライン (Naomi Klein) の本のタイトルにつながっていく『これがすべてを変える――資本主義VS.気候変動』。
ジョコビッチのプレゼンはものすごくデータが豊富だが 、口調があまりにもドライなので、冷厳な崩壊の事実を述べたてられると、あまりにもつらい。足元から崩れてくる絶望感や次世代への罪責感に、打ちのめされる。初心者向けには、清々しいほど穏やかに終末論を語るパブロ・サーヴィンニュやPierre Larrouturouの方がなじみやすいかもしれない(あいにく日本語のサブタイトルはないが、ポルトガル・スペイン・タガログ・イタリア語などが得意な人は、大体理解できるのでは。反論のある人、人類の有限性を拒否する人ほど、お勧めしたい)。
- On Thinkerview channel, watch "Climat: Trois quarts de l'humanité menacés de mort?" on Youtube (in French)
パブロさんは、資源を巡って戦争/内紛が激化し、疫病・飢饉が蔓延することも恐れているが、同時に危機の備え方にもふれている。危機で強者が必ずしも生き残るとは限らず、耐性のある人たちが皆で共助し共生していく共同体が生き残っていくだろうと。
だとすれば。それぞれ異なる人たちが多様性を認め、異なる技能や性質を活かし寄り添い合えるコミュニティが大事になっていくだろう。